鳥海山 純米大吟醸

ちょうかいさん じゅんまいだいぎんじょう

2026.06.05

冷酒で際立つキレとクリアな飲み口の美しさ

『鳥海山 純米大吟醸』は、秋田県由利本荘市に蔵を構える天寿酒造が醸す、上品で透明感のある味わいを特徴とした純米大吟醸である。蔵の背後にそびえる鳥海山の名を冠したこの酒は、山麓の豊かな自然環境と清冽な伏流水に支えられ、米の旨味と香りを繊細に引き出すことを目指して造られている。天寿酒造は1830年創業の歴史ある蔵で、地元産米の活用や自社酵母の研究に積極的に取り組み、秋田らしい“きれいな酒質”を追求してきた。その技術と姿勢が、この純米大吟醸にも色濃く反映されている。

味わいは、純米大吟醸らしい華やかさを持ちながらも、過度に香りが立ちすぎない上品なバランスが魅力である。口に含むと、ふわりと広がる果実のような吟醸香と、米由来の柔らかな甘みが調和し、雑味のない透明感のある旨味が静かに広がる。後味は軽やかでキレが良く、余韻は短すぎず長すぎず、食事と寄り添う上質な純米大吟醸としての完成度が高い。冷酒では香りが引き締まり、よりクリアな印象が際立つ一方、少し温度を上げると米のふくらみが増し、味わいに奥行きが生まれる。

「鳥海山 純米大吟醸」の味わいを支える大きな要素には、天寿酒造が長年取り組んできた「天寿自社酵母」の存在がある。蔵独自の酵母は、華やかさと落ち着きを両立した香りを生み出し、鳥海山シリーズの特徴である“上品で端正な酒質”を支えている。また、使用される酒米は秋田県産を中心に厳選され、丁寧な精米と低温発酵により、米の中心部の純粋な旨味だけを引き出す造りが徹底されている。こうした細やかな技術の積み重ねが、雑味のないクリアな味わいと、飲み飽きしない品の良さにつながっている。

全体として「鳥海山 純米大吟醸」は、華やかさと透明感を兼ね備えた、食中酒としても単体でも楽しめる純米大吟醸である。秋田の自然と蔵の技が生み出す、清らかで端正な味わいをじっくり堪能できる一本といえる。

■飲み方あれこれ!!

涼冷え(15℃):

華やかな吟醸香が最も美しく立ち上がり、透明感のある旨味がすっと広がる温度帯。果実のような香りと軽やかなキレが調和し、「鳥海山 純米大吟醸」の端正さが最も素直に感じられる。

花冷え(10℃):

香りが引き締まり、よりクリアで凛とした印象が際立つ。雑味のない清らかな味わいが強調され、食中酒としても万能に寄り添う。後味のキレが一段と冴え、爽やかな余韻が続く。

常温(20℃):

温度が上がることで米のふくらみが柔らかく広がり、旨味に奥行きが生まれる。吟醸香は穏やかになり、落ち着いた上品さが前面に出る。冷酒とは異なる、しっとりとした魅力が楽しめる。

おすすめのマリアージュ

●白身魚の昆布締め:

澄んだ旨味と軽やかなキレが、昆布の旨味と白身魚の繊細な甘みをすっと引き立てる。吟醸香が邪魔をせず、素材の清らかさをそのまま押し上げる。

●帆立のバター焼き:

バターのコクに対して、透明感のある酸と柔らかな甘みが心地よく寄り添う。帆立の甘みと吟醸香が重なり、余韻に上品な香りが残る。

●鶏むね肉の塩麹焼き:

塩麹のまろやかな旨味と、純米大吟醸の清らかな味わいがよく調和する。香りは控えめに寄り添い、後味のキレが料理を軽やかにまとめる。

●真鯛のカルパッチョ(柑橘仕立て):

柑橘の酸味と果実のような吟醸香が美しく重なり、爽やかな印象が際立つ。真鯛の甘みを壊さず、透明感のある旨味が余韻を整える。

●湯葉刺し:

湯葉のやさしい甘みと滑らかな食感に、酒の柔らかな旨味が寄り添う。冷酒では清らかさが際立ち、穏やかな香りが湯葉の風味を引き立てる。

▶「天寿酒造株式会社」のこと

「天寿酒造株式会社」は、1830年(文政13年)創業の老舗蔵で、秋田県由利本荘市矢島町に根を下ろし、鳥海山の麓という豊かな自然環境の中で酒造りを続けてきた。創業者・大井永吉が麹や濁酒の製造から始めたとされ、その後代々当主が「永吉」を名乗りながら蔵を継承し、地域に密着した酒造りを発展させてきた。明治期には正式な酒造免許を取得し、昭和初期には銘柄を「天寿」に一本化(※)。戦後も独立した蔵として再出発し、現在は七代目が蔵を率いている。

⇒昭和初期には銘柄を「天寿」に一本化(※)

〇昭和初期に銘柄を「天寿」に一本化した背景には、“天から授かった寿ぎを酒に込める”という蔵の願いがある。戦後の混乱期を乗り越え、独立した蔵として再出発した際にもこの精神は受け継がれ、現在の酒造りにも息づいている。

「天寿酒造」の酒造りの特徴としてまず挙げられるのが、「酒造りは米作りから」という理念である。昭和58年には全国に先駆けて「天寿酒米研究会」を設立し、地元農家とともに酒米の契約栽培を開始。美山錦や秋田県開発の酒米「百田」などを中心に、安定した品質の原料米を自ら確保する体制を築いた。この取り組みは40年以上続き、現在の天寿酒造の酒質を支える大きな柱となっている。

仕込み水には、鳥海山の万年雪が70年かけて育む伏流水を使用している。この水は柔らかく清冽で、天寿酒造の酒に共通する“透明感のある味わい”を生み出す重要な要素である。豊富な水量と一定の水温を保つこの伏流水は、酒造りに理想的な条件を備えており、蔵の味の根幹を支えている。

また、「天寿酒造」は伝統を守りながらも革新を続ける蔵として知られる。生酛仕込みや瓶内二次発酵スパークリング日本酒の製造、独自に開発・改造した酒造機械の導入など、品質向上のための挑戦を惜しまない姿勢が特徴的である。さらに、七代目は日本吟醸酒協会の理事長や花酵母研究会の初代会長を務め、花酵母を用いた醸造にも積極的に取り組んでいる。こうした研究と技術革新が、天寿酒造の酒に華やかさと繊細さを両立させる要因となっている。

「天寿酒造株式会社」は、鳥海山の自然、契約栽培米、清冽な伏流水、そして蔵人の技が一体となり、“美酒天寿”と呼ばれる上質な日本酒を生み出す蔵である。伝統を大切にしながらも常に新しい挑戦を続け、国内外のコンテストで高い評価を受けるその姿勢は、創業から続く蔵の精神を今に伝えている。

▶「天寿酒造株式会社」の歴史(年表)

1830年(文政13年):

「天寿酒造株式会社」の起源となる麹・濁酒の製造を大井永吉が開始する。これが蔵の創業とされ、以後代々の当主が「永吉」を名乗りながら酒造りを継承していく。

明治時代(1868〜1912年):

正式に酒造免許を取得し、本格的な清酒製造へと移行する。地域に根ざした蔵として基盤を固め、鳥海山麓の豊かな水と米を活かした酒造りが確立されていく。

昭和初期(1926〜1940年代):

銘柄を「天寿」に一本化し、蔵のブランドとして育て始める。鳥海山の伏流水を活かした“きれいな酒質”が評価され、地域での知名度が高まる。

戦後(1945年以降):

戦時統制から解放され、独立した蔵として再出発する。設備の整備や技術向上が進み、安定した酒造りの体制が整えられる。

1983年(昭和58年):

「天寿酒米研究会」を設立し、地元農家とともに酒米の契約栽培を開始する。これは全国でも先駆的な取り組みで、以後40年以上にわたり天寿酒造の酒質を支える重要な基盤となる。

平成期(1989〜2019年):

生酛造りの復活、瓶内二次発酵スパークリング日本酒の開発、独自の酒造機械の改良など、伝統と革新を両立させる取り組みを積極的に進める。また、七代目が花酵母研究会の初代会長を務め、花酵母を用いた酒造りにも注力する。

令和期(2019年〜現在):

契約栽培米と鳥海山の伏流水を軸に、透明感のある酒質を追求し続ける。国内外のコンテストで受賞を重ね、秋田を代表する蔵として存在感を高めている。

Data

生産者:天寿酒造株式会社

住所:秋田県由利本荘市矢島町城内字八森下117

創業:1830年(天保元年)

TEL:0184-55-3165

URLhttps://www.tenju.co.jp (天寿酒造公式サイト・直接注文可)

特定名称:純米大吟醸酒

原料米&精米歩合:麴米・掛米ともに契約栽培酒造好適米50%

アルコール度数:15%

酵母: ND-4(東京農大短醸分離株/撫子酵母)

日本酒度:+1.0

酸度:1.3

容量: 720ml(瓶)、1800ml(瓶)

 

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