「ユーリゲ醸造所」は、1862年にドイツ・デュッセルドルフ旧市街で創業された、アルトビールの名門ブルワリーです。「Uerige」という名称は、ドイツ語で「気難しい」「風変わりな」といった意味を持ち、創業者の個性的な性格に由来すると言われています。

この醸造所は、ドイツのビール純粋令に則り、麦芽・ホップ・酵母・水のみを使用した伝統的な製法を守り続けています。特に「アルトビール」というスタイルは、下面発酵が主流になる以前から続く上面発酵の技術を用いたもので、「古い（Alt）」という名の通り、クラシックな醸造法に根ざしています。

「ユーリゲ醸造所」のビール造りの最大の特徴は、独自の酵母と焙煎モルトの使用、そして低温熟成による味の深みです。数種類のモルトを丁寧に焙煎し、香ばしさとカラメルのような甘みを引き出しながら、ホップの苦味とのバランスを追求。ホップにはドイツ産の「ハラタウ・パール」や「シュパルト」などが使われ、IBU（苦味指数）は50と、アルトビールの中でも特にしっかりとした苦味が特徴です。

また、ユーリゲ社製の酵母は、草刈りのような爽やかな香りと、焦がしたキャラメルのような甘い香りを生み出し、ミディアムボディのビールに複雑な風味を与えています。外観は赤みがかった銅色で、酵母由来の濁りがあり、クリーム色の泡が美しく立ち上がる様子は、視覚的にも魅力的です。

「ユーリゲ醸造所」は、併設のブルーパブでも知られており、地元民や観光客で常に賑わっています。デュッセルドルフ旧市街は「世界一長いバーカウンター」とも呼ばれ、ユーリゲはその中心的存在。茹でソーセージや豚肉のタルタル「メットブレートヒェン」など、地元料理とのペアリングも人気です。

伝統を守りながらも、個性と革新を融合させたユーリゲ醸造所のアルトビールは、まさにデュッセルドルフの文化そのもの。一杯のビールに込められた歴史と職人技が、飲む人の心を豊かにしてくれます。