Rochefort 10
2025.08.08
贅沢な夜にふさわしい至高のトラピスト
ベルギー南部のロシュフォール修道院で造られる「ロシュフォール10」は、世界でも限られたトラピストビール（※）のひとつに数えられる、極めて希少かつ高品質なダークストロングエールです。トラピストビールとは、厳格な基準を満たした修道院で醸造されるビールのことで、ロシュフォール修道院はその伝統を守り続ける由緒ある醸造所のひとつです。
「ロシュフォール10」は、シリーズ中でも最もアルコール度数が高く（11.3%）、その濃厚で複雑な味わいは、まさに“飲む芸術”と呼ぶにふさわしい存在です。グラスに注げば、深いマホガニー色とクリーミーな泡が立ち上がり、熟したプラムやレーズン、黒糖、チョコレート、スパイスなどが織りなす芳醇な香りが広がります。口に含むと、滑らかで重厚なテクスチャが広がり、甘みと苦味、アルコールの温かみが絶妙なバランスで調和します。
瓶内二次発酵によって熟成が進むため、時間とともに味わいが変化し、数年寝かせることでさらに深みを増すのも魅力のひとつです。寒い季節にじっくりと味わいたい、贅沢な一杯として、世界中のビール愛好家から高い評価を受けています。
「ロシュフォール10」は、単なるビールではなく、修道士たちの知恵と祈りが込められた文化的遺産とも言える存在です。その一滴一滴に、伝統と敬意、そしてクラフトマンシップが宿っています。
■「トラピストビール（※）」とは？
〇トラピストビールは、キリスト教カトリックの厳律シトー会（通称トラピスト会）の修道院で醸造される、特別な条件を満たしたビールです。単なるビールのスタイルではなく、宗教的・文化的背景を持つ「認証制度」に基づいた存在であり、世界でも限られた修道院のみが「トラピストビール」と名乗ることを許されています。
歴史的背景と起源
トラピスト会の起源は1098年、フランスのシトー修道院にさかのぼります。中世ヨーロッパでは安全な飲料水が乏しく、修道院では栄養価が高く保存性に優れたビールが造られるようになりました。修道士たちは巡礼者や貧しい人々にこのビールを振る舞い、信仰と慈善の精神を体現してきました。
フランス革命や戦争による破壊を経て、19世紀以降に再興された修道院では、伝統的な醸造技術が確立され、現在のトラピストビールの礎が築かれました。
認証と条件
■トラピストの認証のロゴマーク
1997年に設立された「国際トラピスト協会（ITA）」は、以下の3つの厳格な条件を満たすビールにのみ「Authentic Trappist Product」の六角形ロゴマークの使用を認めています：
・ 修道院の敷地内で醸造されていること
・ 修道士が自ら醸造するか、監督していること
・ 収益は修道院の維持や慈善活動に充てられること
この認証は、品質と倫理性の両面を保証するものです。
特徴とスタイル
トラピストビールは上面発酵のエールで、瓶内二次発酵（再発酵）を行うため、熟成によって味わいが変化します。一般的にアルコール度数は高め（8〜11％）、風味は濃厚で複雑。フルーティーさやスパイシーさ、酵母由来の香りが特徴です。
専用グラスは聖杯型が多く、香りを引き立てる設計になっています。
現在、世界にトラピスト会修道院は約160ヵ所あり、そのうち9ヶ所でのみトラピストビールが生産されている（2025年時点）。
・オルヴァル（ベルギー／オルヴァル修道院）
・シメイ（ベルギー／スクールモン修道院）
・ロシュフォール（ベルギー／サン・レミ修道院）
・ウェストマール（ベルギー／聖心ノートルダム修道院）
・ウエストフレテレン（ベルギー／シント・シクステュス修道院）
・ラ・トラップ（オランダ／コニングスホーヴェン修道院）
・ズンデルト（オランダ／アブダイ・マリア・トゥーフルフト修道院）
・トレフォンターネ（イタリア／トレフォンターネ修道院）
・ティント・メドウ（イギリス／ティント・メドウ修道院）
■飲み頃温度
〇「ロシュフォール10」の適温は12〜14℃位で、冷やしすぎると香りが閉じてしまい、温度が高すぎるとアルコール感が強く出すぎます。セラー温度がベスト。冷蔵庫から出して少し置いておくとちょうど良いです。グラス選びは「チューリップ型」または「ゴブレット型」で、香りを閉じ込めつつ広げる形状が理想的。修道院系ビールらしく、脚付きのゴブレットグラスも雰囲気が出ておすすめです。ゆっくりと傾けて注ぎ、泡を立てすぎないように。最後の沈殿物（酵母）は好みに応じて。香味が変わるので、別に味わうのも一興。
▶サン・レミ修道院のこと
ベルギー南部、アルデンヌ地方の静かな森に佇む「サン・レミ修道院」は、13世紀に創設された由緒あるトラピスト修道院です。この修道院は、カトリックの厳律シトー会（通称トラピスト会）に属し、「祈りと労働」を重んじる修道士たちによって、長きにわたり精神的な修養と自給自足の生活が営まれてきました。
「サン・レミ修道院」でのビール造りの記録は1899年に遡りますが、実際には中世から醸造が行われていたとされます。幾度もの戦乱や宗教改革、フランス革命によって修道院は破壊と再建を繰り返し、現在の醸造体制が整ったのは1952年以降のことです。今日では「ロシュフォール醸造所」として知られ、世界でも数少ない「Authentic
Trappist Product」認証を受けたトラピストビールを生産しています。
「サン・レミ修道院」のビール造りは、営利目的ではなく、修道院の維持や慈善活動への寄付を目的としています。醸造は修道院の敷地内で行われ、修道士の監督のもと、伝統的なレシピと製法を厳格に守りながら造られます。そのため、一般見学は許可されておらず、醸造所前には「ここは祈る場所です。静寂に」と書かれた看板が掲げられているほどです。
「ロシュフォール醸造所」では現在、「ロシュフォール6」「ロシュフォール8」「ロシュフォール10」の3種が造られており、いずれも上面発酵によるダークエールです。中でも「ロシュフォール10」はアルコール度数11.3%と最も高く、熟した果実やスパイス、黒糖、チョコレートなどの複雑な香りと、重厚で滑らかな口当たりが特徴です。瓶内二次発酵によって熟成が進み、時間とともに味わいが変化するため、数年寝かせて楽しむことも可能です。
「サン・レミ修道院」のビールは、単なる飲料ではなく、修道士たちの祈りと労働、そして伝統への敬意が込められた“液体の文化遺産”とも言える存在です。静寂の中で醸されるその一滴は、ベルギービールの真髄を体現し、世界中の愛好家を魅了し続けています。
▶「サン・レミ修道院」の歴史（年表）
496年頃：
フランク王クロヴィス1世がランスで洗礼を受ける。洗礼を施したのは司教レミギウス（聖レミ）。
533年：
聖レミが死去。遺体は聖クリストフォロス礼拝堂に安置される。
8世紀半ば：
聖レミの墓所がある場所に王立のサン＝レミ修道院が創設される。ベネディクト会が管理を引き継ぐ。
9〜10世紀：
聖クリストフォロス礼拝堂が改築され、修道院教会となる。
1049年：
教皇レオ9世がロマネスク様式のサン＝レミ・バジリカを奉献。
12〜13世紀：
内陣と後陣が建設され、ステンドグラスやタペストリーが制作される。
18世紀：
隣接する建物がベネディクト会の修道院として使用される。後にサン＝レミ博物館となる。
1789年頃（フランス革命）：
価値ある聖遺物や記念品が盗難に遭う。聖レミの墓も破壊される。
19世紀：
聖レミの墓が再建される。
1918年8月1日：
第一次世界大戦中、ドイツ軍の砲撃により屋根が炎上・崩落。壁は残るが床に破片が散乱。
1991年：
ユネスコ世界遺産「ランスのノートルダム大聖堂、サン＝レミ旧大修道院及びトー宮殿」として登録。
Data
製造元：サン・レミ修道院
スタイル： トラピスト（上面発酵）
原料： 麦芽、ホップ、糖類（キャンディーシュガーなど）
アルコール度数：11.3％
内容量：330ml
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