銀河高原ビールは、1996年に岩手県西和賀町（旧沢内村）で誕生したクラフトビールブランドです。豪雪地帯である沢内村の村興し事業として、豊富な天然水と冷涼な気候を活かし、ドイツの伝統的なビール造りに倣った本格的な醸造が始まりました。創業者は住宅メーカー・東日本ハウスの創業者で、地元の自然と文化を融合させたブランド名「銀河高原」は、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』に着想を得て、「夢とロマン」「天然の名水」を象徴しています。

看板商品である「小麦のビール」は、南ドイツ・バイエルン地方の伝統的なスタイル「ヘーフェ・ヴァイツェン」に基づいています。小麦麦芽を50%以上使用し、酵母を濾過せずに瓶詰めする無濾過製法を採用。これにより、バナナのようなフルーティな香りと、白く濁った黄金色、まろやかな口当たりが特徴のビールが生まれました。副原料を使わず、麦芽・ホップ・水・酵母のみで造られるシンプルながらも奥深い味わいは、ビール初心者にも親しみやすく、クラフトビール愛好家にも高く評価されています。

地ビールブームの波に乗り、全国に複数の醸造所やビアレストランを展開しましたが、2000年代以降は事業縮小を余儀なくされ、最終的には沢内醸造所のみが残りました。2020年には沖縄のヘリオス酒造が沢内醸造所を取得し、製造はヤッホーブルーイングに委託される形でブランドは継続。現在も「小麦のビール」は全国で販売されており、自然とのつながりを感じさせるコンセプトと、酵母の旨味を活かした製法が、銀河高原ビールの魅力として根強い人気を保っています。