「伊平屋酒造所」は、1948年に伊平屋島の有志23名によって組合として設立されました。当初は簡易的な蒸留施設で、島内限定の酒造免許のもとで泡盛を製造していましたが、1972年の本土復帰を機に島外への販売が可能となり、1974年には保久村家が経営を引き継ぎ、現在の体制へと移行しました。以降、島の自然資源を活かした泡盛造りに注力し、地域に根ざした酒造所として発展を遂げてきました。

「伊平屋酒造所」の焼酎造りの最大の特徴は、伊平屋島の豊かな自然環境を活かした“テロワール”（※）にあります。島は山々と水田に囲まれ、清らかな湧水が豊富に流れています。この水と、地元で栽培された米を使うことで、他にはない個性豊かな泡盛が生まれます。使用される米には、ジャポニカ米の「ちゅらひかり」や、インディカ系の長粒種米「北陸193号」や「夏至南風」などがあり、それぞれの品種の特性を活かした仕込みが行われています。

また、泡盛造りには黒麹菌を使用し、全麹仕込みという伝統的な製法を守りながらも、若い世代の蔵人たちが新たな挑戦を続けています。先代の急逝後、30代の若手メンバーが中心となって酒造所を引き継ぎ、2022年には法人化。現在は、先代の配偶者である保久村政代氏と、琉球泡盛テロワールプロジェクトのマネージャーであった竹本進之介氏の2名体制で運営されています。

「伊平屋酒造所」の泡盛は、優しくふくよかな香りと、米の旨味やわずかな焦げ感を感じさせる深い味わいが特徴です。商品には、島の自然や文化を反映した銘柄が多く、なかでも「照島」（※2）はその代表格として人気を集めています。伝統を守りながらも、島の未来を見据えた酒造りを続ける「伊平屋酒造所」は、まさに伊平屋島の誇りといえる存在です。