ローレンスバーグ蒸留所は、アメリカ・インディアナ州ローレンスバーグに1847年、ジョージ・ロスが「ロスビル蒸留所」として創設した長い歴史を誇る蒸留所のひとつです。アメリカのウイスキー産業において重要な役割を担い、禁酒法時代（1920～1933年）を生き抜いた数少ない蒸留所のひとつとして知られています。

禁酒法（1920～1933年）の期間中、多くの蒸留所が閉鎖されるなか、ロスビル蒸留所は医療用ウイスキーの供給により存続し、ウイスキーの生産を続けました。1933年、カナダのシーグラム社が蒸溜所を買収。シーグラムのウイスキー製造拠点のひとつとして発展しました。

「シーグラム セブンクラウン」は、禁酒法解禁から約1年半後の1934年秋にアメリカ初のブレンデッドウイスキーとして発売されました。禁酒法が撤廃されると、人々は酒を求めて殺到しましたが、市場には粗悪なウイスキーがあふれていました。そんな中、シーグラム社は焦らず、自社のウイスキーの熟成を待ち、品質が十分に整ったタイミングで満を持して販売した。

こうして誕生した「シーグラム セブンクラウン」は、良質な原酒のみをブレンドし、軽快な口当たりとまろやかな味わいを実現。発売からわずか2か月で売上トップに躍り出し、以来アメリカを代表するトップセラー・ウイスキーのひとつとなった。

ブランド名「セブンクラウン」は、発売前に社内で試された十数種類のブレンドのうち、7番目が採用されたことから名付けられた。王者の象徴「クラウン」と組み合わせることで、その品質への自信を表現している。

ローレンスバーグ蒸留所は、シーグラムのもとで生産を強化したが、2000年にシーグラムは解体。蒸留所は複数の所有者を経て、2011年にMGPイングリーディエンツが買収。MGPはライウイスキーの製造に特化した企業であり、現在もローレンスバーグ蒸留所はライウイスキーやブレンデッドウイスキーの生産を続けている。

この蒸留所の特徴のひとつが、地下帯水層から採取し、石灰岩で濾過された水を使用していること。この水は、ライウイスキーに純粋でユニークな味わいを与えるとされ、ローレンスバーグ蒸留所のウイスキーの品質を支える重要な要素となっている。

シーグラムの解体により、酒類部門はペルノ・リカールとディアジオによって分割買収されました。具体的には、ペルノ・リカール社は「シーバス・リーガル」「グレンリベット」「マーテル」などを取得。

一方、ディアジオ社は「キャプテン・モルガン」「クラウン・ローヤル」「VO」「セブンクラウン」などのブランドを引き継いだ。

「セブンクラウン」に「シーグラム」ブランドが現在も使われているのは、市場で広く知られたブランド名を維持するためで、既存の顧客層の信頼を保つ狙いがあるためと考えられる。2021年には、MGPイングリーディエンツがブランドのアイデンティティを強化するために、ロス＆スクイブ蒸溜所に改名した。