アルバータ蒸溜所は、第二次世界大戦終結の翌年の1946年に、カナダのアルバータ州カルガリー近郊で創業されました。創業者は、カナダを代表する慈善家であり石油王でもあったフランク・マクマホンとマックス・ベルの二人。彼らは、アルバータ州の豊かな穀物と、カナディアンロッキーの清らかな水に着目し、上質なライウイスキーの製造を目指しました。

蒸溜所は標高1,048メートルの高地に位置し、仕込み水には氷河から溶け出したグレイシャルウォーターが使われています。この自然環境は、クリーンでシャープなウイスキーの風味を育む理想的な条件です。

カナディアンウイスキーでは、ライ麦を51%以上使ったものだけが「カナディアン・ライウイスキー」と表示できます。そのなかでアルバータ蒸溜所は、カナダ国内で唯一、フレーバリング用とベース用のウイスキー両方を、ライ麦100％で製造できるという希少な設備を有しています。これは、ライ麦の扱いが難しく、発酵や蒸溜に特別な技術が求められるためです。

製法にも特徴があります。フレーバリングウイスキーは、ビアスチルで蒸留したローワインを大型ポットスチルで再蒸留し、新樽またはバーボンのファーストフィル樽で熟成。ベースウイスキーは、ビアスチルと抽出塔を組み合わせた連続式蒸留機でアルコール度数94％まで蒸留し、バーボンの古樽で熟成させます。いずれも最低3年の法定熟成期間を超える5年間の熟成を経ており、コクを抑えつつ口当たりのやわらかいウイスキーに仕上がっています。

設備面でも着実な成長を遂げました。1957年には加熱制御機能つき熟成倉庫が導入され、10万樽の保管が可能に。さらに1975年には敷地を42エーカーへ拡張し、最終的には60万樽以上の熟成能力を持つ大規模施設となりました。こうして、北米最大級のライウイスキー蒸溜所としての地位を確立したのです。

1967年、米ナショナル・ディスティラーズ社に買収された後、1987年には同社がビーム社に吸収され、アルバータ蒸溜所もその傘下となりました。さらに2014年には、日本のサントリーがビーム社を買収し、同蒸溜所もサントリーグループの傘下となりました。

これにより、アルバータ蒸溜所はカナダ国内にとどまらず、アジア市場を含む世界展開を積極的に進めています。主力ブランドの「アルバータ プレミアム」は、ライ麦100％の原料と独自の蒸溜技術によって、スパイシーでスムーズな味わいを実現。年間2,000万リットルもの生産量を誇り、世界中の愛好家から高く評価されています。

また、サントリーが2019年に発売した「SUNTORY WORLD WHISKY 碧Ao」には、アルバータ蒸溜所の原酒が使われており、ブランドの国際的評価にもつながっています。クセが強すぎず飲みやすい一方で、ライウイスキーならではの個性をしっかりと感じられ、北米におけるライウイスキー復興の象徴的存在とも言えるでしょう。