「沖永良部酒造株式会社」は、奄美群島・沖永良部島に根ざした黒糖焼酎の共同瓶詰会社であり、島の焼酎文化を支える重要な存在です。「沖永良部酒造」は、1969年（昭和44年）7月に設立されました。設立の背景には、当時の中小企業近代化促進法の影響があり、家族経営の小規模な蔵元が協業化を求められる中で、島内の複数の蔵元が集まり、共同で瓶詰・販売を行う体制が整えられました。創業時には、島内6蔵（德田酒造、竿田酒造、沖酒造、神﨑産業、原田酒造、新納酒造）が参加し、それぞれの原酒をブレンドして製品化するという独自のスタイルを確立しました。

その後、時代の変化とともに蔵元の統廃合が進み、現在は德田酒造・竿田酒造・沖酒造・神﨑産業の4蔵が中心となって構成されています。2020年（令和2年）には德田酒造と合併し、「沖永良部酒造株式会社 内東蔵（うちひがぐら）」として再編（※）され、より一体的な製造体制が整いました。

焼酎造りにおいて「沖永良部酒造」が大切にしているのは、伝統を守りながらも探究心を持ち続ける姿勢です。代表銘柄である「稲乃露」は、芳醇な香りとまろやかな味わいが特徴で、黒糖の使用量を通常の2倍にすることで、深いコクと甘すぎないとろみを実現しています。常圧蒸留によって原料の風味をしっかりと引き出し、1年以上の熟成を経て出荷されるため、口当たりが柔らかく、余韻の長い味わいが楽しめます。

また、他の銘柄としては、減圧蒸留で軽やかに仕上げた「はなとり」や、3蔵の原酒をブレンドした「えらぶ」、さらにその「えらぶ」を樽で熟成させた「白ゆり」など、多彩なラインナップを展開しています。これらはすべて、各蔵元の個性を活かした原酒をブレンド（※2）することで生まれる、唯一無二の味わいを持っています。