「奄美酒類株式会社」は、1965年（昭和40年）に設立されました。当時、徳之島には複数の小規模な蔵元が存在していましたが、黒糖焼酎の知名度や流通はまだ県外には広がっていませんでした。そこで、松永酒造場の初代・松永清氏が中心となり、6つの蔵元が協力して奄美群島初の共同瓶詰め会社として「奄美酒類株式会社」を設立しました。

設立当初から「奄美」という統一ブランドを掲げ、関西を中心に島外・県外への販路拡大に尽力。現在では、亀澤・天川・高岡・中村・松永の5つの蔵元が製造した原酒をブレンドし、個性豊かな黒糖焼酎を製品化しています。代表銘柄「奄美」をはじめ、さまざまなラインナップを展開し、黒糖焼酎の魅力を全国に発信し続けています。

焼酎造りにおいて「奄美酒類」が特に重視しているのは、各蔵元の伝統的な製法と原料へのこだわりです。たとえば、天川酒造では「スッポン仕込み」と呼ばれる伝統技法を用い、一次仕込み（米麹）と二次仕込み（黒糖）を同じタンクで行うことで、深い味わいを引き出しています。また、原料の黒糖にも強いこだわりを持ち、かつては自社で製糖も行っていたほどです。こうした姿勢は、焼酎の香りやコクにしっかりと反映されています。

さらに、各蔵元の杜氏たちは、長年の経験と情熱をもって焼酎造りに取り組んでいます。たとえば、杜氏歴23年の福地初弘氏は、「良い酒を造りたいという情熱は、20年前も今も変わらない」と語り、仕込みタンクを何度も見回るほどの熱意を持って品質を追求しています。

「奄美酒類」の焼酎は、常圧蒸留と貯蔵にこだわり、黒糖の芳醇な香りとまろやかな口当たりを実現しています。ブレンドによって生まれる複雑で奥深い味わいは、黒糖焼酎ならではの魅力を最大限に引き出しており、食中酒としても高く評価されています。